1月23日、MMD研究所が行った意識調査の結果が発表されました。その中のひとつが「子どものお小遣い」に関するものです。子どもにお小遣いを渡していると回答した親847人に対し、「キャッシュレスでお小遣いを送金したいか」という問いに、「利用したい」(18.5%)と「やや利用したい」(26.9%)合わせて、45.4%が利用意向を示しました。現金を持たせるのは不安だし、利用履歴は残るし、使ってみれば結構便利です。そんな環境の中、金融教育が本格的にスタートしました。
きっかけは成人年齢の引き下げ
「小学校から帰ってきた息子が、『お母さんはクーリングオフをやったことはある?』って聞いてきたんです。学校の授業で買い間違いをしても、返してもらえる制度があるって。いま高校生の娘が小学生の時はそんなことは聞かれなかったので、びっくりしちゃいました」
公立の小学校と中学校に通う子どものお母さんであるさとみさん(42歳)はそう驚きを隠しません。
実は2020年から段階的に、小学校、中学校、高校と金融教育を義務化しているのです。これは文部科学省が定めている「学習指導要綱」の改正によって決められました。学習指導要綱とは、学校での教育プログラムの基本となるもので、その内容に沿って履修内容が決められます。そこに「金融教育」が加わっているのです。
でも、時間割を見ても教科書を確認しても「金融」なんてありません。それもそのはず。教科として行っているのではなく、関連のある項目を従来の教科の中にはめ込んでいるのです。
なぜ金融教育を早くから行うことにしたのかといえば、ひとつに成人年齢の引き下げが関係しているといわれています。18歳から成人になると、クレジットカードなどが自分の意志で契約できるようになります。まだ社会経験、就業経験のない段階での金融の入り口に立つことになったのです。そのため、就業やアルバイトなど、本格的に自分でお金を稼ぐ前、そのお金を使う前に事前にある程度の教育を行うようにしようということのようです。
また他の先進国などでは以前から金融教育が行われていましたが、日本ではほどんどありませんでした。金融分野が国内だけで閉じている時代はそれでも対応できましたが、現代は世界に開いています。特にいまの十代以下は最初に手にした「ケータイ」がスマートフォンとなるわけで、本人や親が意図するしないに関わらず、世界に通じてしまうのです。金融教育のスタートはそういった環境の変化が大きく関わっている、と言えるかもしれません。
お金ってなに?基本からしっかり学ぶ
金融と言われると、大人になればるほど、「株価」や「為替」「先物取引」などと複雑怪異な世界を思い起こすでしょう。そんな難しいこと、って思うかもしれませんが、もっともっと単純です。お金の基本を小学校・中学校でしっかり教え、高校ではもう少し自立したお金のことを学ぶという感じです。
例えば小学校では冒頭のように、「間違えて商品を買ってしまった場合」などを考えて、返品できる方法や、返金に関する決まりなど、言葉は使わなくとも、売買に関する決まり事である「売買契約」を学んだりします。
中学校では「EC(電子商取引)」についてを考えているケースもあります。町から本屋さんが消えている状況ですから、中学生になればスマホからネットショップを通じて参考書などを購入することもあるでしょう。その手順や注意事項、トラブルがあったときの対処法を具体的に伝えているとか。
高校生になると、かなり高度な分野も学ぶようです。自分自身の将来設計に付随したマネープランや、「単利」「複利」といった利息に関する違いなども加わってきます。さすがに社会デビューが近いからか、ちょっと難しい話となりますね。
親世代だってちゃんと学べる
そんな中で親世代は子どものころから金融教育を受けてはきませんでした。親子に大きな格差が出てしまったら……。
そこで親世代も多少でも金融を学んでおきたいものです。「でもそんな時間はない」「今から難しいことは無理」っと思うかもしれませんが、今まで自分でやってきた日常のお金の使い方を整理するつもりで学んでみましょう。
例えば、金融広報中央委員会のWEBサイト「知るぽると」(https://www.shiruporuto.jp/public/)には、金融教育に関する記述があるので、子どもと同じ部分から読み始めてもいいですし、家計管理から資産形成に関する情報などが盛りだくさん。時間がある時にぽちぽちっと見ているだけでかなり学ぶことができます。また、銀行など金融機関でも金融セミナーを買いさししたりしているので、参加してみるのもいいかもしれません。
金融というとどうしても構えがちですが、お金の考え方、と思えばいいのです。
子どもの金融教育は2023年度から全国で本格されるといわれます。同時に親ができること、それはネットリテラシーかもしれません。学校で学んだことを、今やスマホという手の中で実践できる時代。そうなると、ネットの使い方、注意点、禁止事項を伝える必要が大きくなります。
お小遣いをQRコード決済へのチャージで行うようになってきた昨今、親は金融だけじゃなく、ネットリテラシーをもっと身に着ける必要があるのかもしれませんね。